2011年6月28日火曜日

第84話 マカサラはビールのよき友 (その1)

マカサラとは何ぞや?
マカロニサラダのことでござんす。
ポテトサラダをポテサラと称するが如しですな。

昭和30年代、町の精肉店には惣菜御三家というのがあった。
何かというと、マカロニサラダ・野菜サラダ・シューマイである。
野菜サラダとは現在のポテトサラダのことで
ポテトも野菜の1種だから昔はこう呼んだものだ。
今ではあまり見掛けなくなったが
小ぶりの体にグリーンピースをポツンと乗っけたシューマイは
実に肉屋の定番だったのである。

当時の家庭の主婦はとにかく忙しかった。
洗濯はたらいと洗濯板、掃除はほうきとはたき、
米を炊いたり、サカナを焼いたりするのは七輪の時代だもの、
まともなおかずなんざ、いちいち作っていられやしない。
だからこそ、肉屋の揚げ物と惣菜御三家が大活躍したのだ。

ハナシを本日の主役、マカサラにしぼる。
それにしてもなぜイタリアのパスタをマヨネーズで和えた、
珍妙な食べものが日本でこんなに普及したのだろう。
スパゲッティ・ナポリタンのように
米国から渡来したものと思われるが
あれほどポピュラーになるなんて、ちょいとした驚きである。

子どもの頃になじんだ味は大人になっても忘れがたい。
懐旧の想いも手伝って、酒場・食堂・居酒屋で飲むときなど、
つい、つい、マカサラに食指が動いてしまう。
ビール・酎ハイ・ホッピーとの相性がよいのも大きな理由だ。

JR埼京線・十条駅前の「三忠食堂」を訪れたのは
ある晴れた金曜日の16時過ぎ。
白いゴム長靴の店主が中に外に独りでテキパキと動き回る。
よくよく見ると、千昌夫のコンパクト版といった面貌だ。
瓶ビールと生野菜を同時に注文した客に
「ビールはキリンとアサヒのどっち? 
 生野菜にはドレッシングとマヨネーズのどっち?」―
なかなかキメのこまかい接客ぶりではござらんか。

店内には地元のオッサンたちが数人、早くもきこしめしている。
外回りの若いサラリーマンが遅い昼めしを食べてもいる。
こちらはさっそくキリン一番搾りの中ジョッキ。
長距離を歩いてきたのでジョッキの3分の2ほどを一気飲みだ。
音には出さぬが、気分的には「プッファ~!」でんがな。

壁に貼り巡らされた品書きの短冊が半端じゃない。

これはホンの一部にすぎない

さっそくマカサラ(200円)を頼み、
あとはベーコンエッグ(320円)とあじフライ(350円)で迷い、
結局は前者に決定した。

キャベツを敷いたマカサラ

こちらにもキャベツとマカサラが隠れていた

エッグスではないエッグの黄身がいい塩梅。
注文取って作って出して、すべて独りでこなすゴム長オジさん、
これじゃ茶髪でチャラチャラしたオネエちゃんなんか要らんわな。

=つづく=

「三忠食堂」
 東京都北区上十条2-28-4
 03-3909-2730