2011年6月16日木曜日

第76話 婆ちゃん帰って 日が暮れて

昨日の替え歌の原曲は
五木ひろしの「長崎から船に乗って」。
作詞は山口洋子で作曲の平尾昌晃とは
伝説のゴールデンコンビだった。
この歌は艱難辛苦をなめ続けた五木が
やっと「よこはま・たそがれ」で認められたあとの第2弾。
流行歌手の場合、デビュー後の2曲目がとても重要で
これをヒットさせないと一発屋のレッテルを貼られ、
使い捨ての憂き目を見る。

ついでに「赤坂の夜は更けて」は
関口宏と結婚して引退した西田佐知子が歌った名曲。
島倉千代子との競作だったが、これは西田の圧勝。
千代チャンのコブシは赤坂のイメージじゃないやネ。
もっとも赤坂の花柳界ならまたベツのハナシだけど・・・。
西田佐知子という歌い手サンは競作にめっぽう強く、
あの「コーヒー・ルンバ」でもあのザ・ピーナッツを撃破した。

歌謡曲はこれくらいにして今回はお婆ちゃんの原宿、
巣鴨のとげぬき地蔵通りに出没する。
いつの頃からか、この地に婆さんたちが集結し始めた。
巣鴨地蔵通り商店街の中ほどに位置する、
萬頂山高岩寺は通称とげぬき地蔵。
到来者はまずお地蔵さまに手を合わせ、
気に染まった飲食店で昼餉をとったり、お茶を飲んだり。
そうしておいて自分の衣類や孫のみやげの調達を済ませ、
思い思いに家路を急ぐのである。
爺さんにドヤされたり、嫁にイビられたりしないようにネ。

主役が去って日の暮れた商店街には
閑古鳥が鳴くのかと思いきや、意外にそうでもない。
けっして繁華な盛り場というのではないが
そこそこに人の出入りはあるのである。
中でも繁盛しているのは2軒の「ときわ食堂」。
高岩寺に近いほうが本家で、庚申塚にあるのが分家。
分家は本家の女将の息子が開いた。
若い経営者のアイデアが功を奏したものか
客足は分家のほうに分があるように見える。

J.C.は改装前の本家の雰囲気が好きだったが
死んだ子の歳を数えていても仕方がない。
数年ぶりで本家の敷居をまたいだ。
ビールの大瓶が450円と下町の大衆酒場より安いくらい。
350円の煮物盛合わせの充実振りはどうだ。

茄子・大根・人参にコンニャクと鶏肉も

大根と人参の切り口を見ればキレイなシゴトぶりが判ろう。

ロールキャベツ(330円)はいかにもデキ合い風ながら、
値段が値段なので文句は言えない。
かつ煮(500円)には珍しくも練り辛子が添えられている。
何だか押上か曳舟辺りで飲んでる気になってきて
川向こうの定番、ホルモン焼き(450円)に食指が動く。

下町とは様子が異なる長ねぎ・玉ねぎ入り

店内に婆ちゃんの姿なくとも
婆ちゃんの原宿で飲む気分は悪くない。
年寄り年寄りとバカにするなかれ、いずれおのれが行く道だ。
エッ? もう来てるってか?
放っとけや!

「巣鴨 ときわ食堂」
 東京都豊島区巣鴨3-14-20
 03-3917-7617