2011年6月9日木曜日

第71話 練馬・板橋 行ったり来たり (その1)

ゴルフをよして早や11年半、
以来、運動らしい運動をしていないから
身体がなまっちまうことはなはだしい。
ただ、歩くことだけは大好きで
殊に知らない町を歩かせたら4時間でも5時間でも平気。
脚が棒になっても疲れというものを知らない。

これはおそらく高脂血症のせいであろうよ。
血液中にエネルギーがたっぷりと含まれているのだ。
と、勝手に思い込むようにしている。
病(やまい)は気からというけれど、
気の持ちよう一つで、病が福に転じることもある。

シドニー五輪における女子マラソンの金メダリスト、
高橋Qチャンも高脂血症だったと聞いた。
あの細い身体で高脂血症なら
軽自動車にハイオクを注入しているようなもの、
そりゃ走りやすいやネ。
ラッタッター・・・、てなもんや三度笠。

都心はすでに歩きつくした。
山手線内にとどまらず、川向こうは江東・墨田区、
城西は中野・杉並区、城南の品川・大田区あたりは
路地裏に至るまで相当に歩き回った。
地下鉄や私鉄の駅周辺をほっつき歩くのが主たる目的だから
都内に知らない駅そば商店街などほとんどない。

先の土曜日、朝シャン(死語か?)しながら考えていた。
はて、今日はどこへ行ったものか。
ここで浮かんだのが東武東上線・東武練馬である。
あの町にはしばらく行ってないぞ。
沿線の中板橋・成増に棲んだことがあるので
知りつくしたものと思っていたが
ここだけスッポリ抜け落ちていた。

高校時代、東武練馬にはよく来た。
今もストックホルムで
現役のタクシードライバーをしているS水クンちに
たびたびシケ込んだものだった。
火曜日午後の柔道の時間がイヤでイヤで
昼めしを食い終わったら、仲間数人とフケるのであった。
自分でする格闘技は嫌いだ。

その日、下車したのは有楽町線・氷川台駅。
行きがけの駄賃のつもりである。
まだ駅はなかった昔、ここにもよく来た。
やはり高校時代のことで、麻雀の師匠の家があったのだ。
この師匠、実は中学のときの警備員のオジさん。
どんな経緯で仲良くなったのか
今となってはまったく思い出せず、何やら不思議。

氷川台から進路を北にとり、
駅からちょいと離れた古い商店街へ。
有楽町線が通る前はささやかな盛り場だったのだろう。
寂れてはいても地域に密着している様子、地元客がちらほら。

お次は建物の前を何度も通ったネリカンこと東京少年鑑別所だ。
隣接して、ねりま青少年心理相談室というのがあった。
ヒマと好奇心に任せてのぞいてみる。
ほう、わが子に対して親が抱える問題は
非行・不登校・子育ての悩み、この3点につきるのだな。
子のないわが身を振り返り、なんだかホッとした。
さっ、次へ向かおう。

=つづく=