2011年6月14日火曜日

第74話 小さな手帳 (その2)

そう、この小さな手帳が
ダンボール箱の奥から出てきたのは昨年のこと。
実に久しぶり再会であった。
表紙には
1971 WASHITANI SHOTEN CO.
の文字。

鷲谷商店というのは
大阪市・天王寺に本社を構えるサントリーの代理店。
手帳を手に入れた経緯はまったく覚えていない。
40頁にわたる価格表が興味深いので
一例を紹介してみよう。

    品名          容量    卸価格  小売価格 
 サントリー・オールド  760ml   1615   1900
    〃 角瓶       720ml   1210   1450
 トリス・エクストラ         640ml      288          340
 ブランデー X・O      700ml   4240    5000
 赤玉ポートワイン      550ml    213        260
 ヘルメス・シャンパン  720ml    650    840
      〃 アブサン      720ml    760     900
      〃 テキーラ      720ml     840   1000
 ジャック・ダニエル黒  760ml   8000  10000
 サントリー純生大瓶     633ml    122    140


ザッとまあ、こんな感じ。
ポートワインやシャンパンの商標はまだ使えたのだ。
今は無きアブサンは、今は亡き父親が飲んでいた。
ちなみに度数は68度で、全サントリー製品中最強。
これも今は無き純生だが、ビールは安かったんだねェ。

手帳の住所録に中学・高校時代の友人や
世話になった大人たちの名前がズラリ並んでいるのは
’71年の3月末に欧州旅行を企てており、
旅先から絵葉書を送るためである。

住所録以外はほとんど空白ながら、
一応、渡航用の持ち物リストがあった。
アスコットシャツやヘアチックが時代を感じさせる。
”5円玉50個”というのは当時のヨーロッパに
穴開きコインがなく、珍しいのでちょっとしたおみやげ用。

あとは
①フィンランド・・・スウェーデン間連絡船 
②チェコスロヴァキア・ポーランド査証 
③欧州ユースホステル・リスト
以上のメモがあるのみ。
こうして生まれて初めての海外に出たのだった。

ハナシは’71年から’68年にまた戻る。

 ♪  淋しげな 雨に濡れた君の
   くちびるが 忘れられなくて
   わかれても 私は信じたい
   いつの日か あなたに
   愛される 愛の奇跡  ♪
       (作詞:中村小太郎)


この年のマイ・モースト・フェイヴァリット・ソングは
ヒデとロザンナの「愛の奇跡」であることは昨日書いた。
当時はたびたび高校の授業をサボッて
同級生のS水クンの家に入り浸っていた。
買ってもらったばかりの小さなステレオにかかるレコードは
「愛の奇跡」とビージーズの「マサチューセッツ」の2枚だけ。
繰り返し、繰り返し聴き続けて
今もことあるごとに頭の中でコダマするのです、ハイ。