2011年6月15日水曜日

第75話 赤坂の夜は更けず

病院に行きました。
自身の受診でもなければ、知人を見舞うでもなく、
おそらくこういうケースは生まれて初めてのことだ。
半世紀以上生きてきて、いまだに入院や手術は未体験。
これは歓ぶべきことであろうか?
何といっても人生は健康第一、大いに歓ぶべきだろう。

友人のハーピスト・ I 﨑サンのミニ・コンサートが
高輪のせんぽ病院で開かれ、
例によってその進行役に狩り出されたわけだ。
この数日前にもやはりコンサートで
栃木県・西片町を訪れたばかり。
売れっ子の助っ人ってェのも、なかなかラクじゃござんせん。
西片町はのどかで人がみな親切でいい土地でした。
おみやげにいただいたお米も旨かった。

此度の仕掛け人は当病院の名医・ I 原ハカセ。
この人は当ブログの読者にして
気の置けないのみともでもある。
飲むほどに酔うほどにゴキゲンうるわしく、
豪快な高笑いが店内に響き渡るのは迫力十分。
とにもかくにもハカセがいないと座の雰囲気が消沈する。

病院なので聴衆はほとんど患者さん。
中には大病を患っている方もおられようから
普段より厳かに公演を進めていった。
くだらないギャグで笑いを取るのを控えたのだ。

無事演奏が終わったあと、そのお礼にと、
ハカセがわれわれを鮨屋に招待してくれた。
行き先は彼行きつけの「赤坂 藤」。
この店は何回か訪れた。
親方のY澤サンとは食事をともにした仲である。
赤坂では一、二を争う鮨の名店、
弾む胸を抑えつつ、心静かにつけ台に並んだ。

真子がれい・生とり貝・青柳と続き、
三浦半島は松輪の港に揚がった槍いかの登場。
いろいろな部位を少しずつ食べ比べるいか三昧だ。
槍いかの旬は2・3・4月のハズ。
5月半ば過ぎ、いわゆる名残りだが
身の張りよろしく、コリコリとした食感を失ってはいない。
天然かんぱちの活け〆と1日寝かしたものを1切れずつ。
爽快感と熟成感の直接対決は甲乙つけ難し。

にぎりに突入する。
この頃には芋焼酎を飲みすぎており、記憶が曖昧だ。
真子昆布〆・小肌・赤身づけ・穴子と来て、あとはおぼろ。
おぼろは海老や白身を炒ったオボロではなく、おぼろ気のおぼろ。
玉子を食べたのか食べなかったのか、今となっては忘却の彼方だ。

  ♪    いまごろ どうして いるのかしら
     せつない 想いに ゆれる灯かげ
        
むなしい未練とは 知りながら
     恋しい人の名を 囁けば
     逢いたい気持ちは つのるばかり
     赤坂の夜は 更けゆく       ♪
          (作詞:鈴木道明)


おもてへ出ても赤坂の夜はまだ明るい。
この時期、そうやすやすと夜は更けない。
でもって、なぜかそこからかなり遠い浅草のスナック「B」へ。

 ♪  赤坂から電車に乗って 浅草着いた
   ここは田原町 女が待ってます
   エンコの女は お人好し
   いいことばかりの そのあとで
   白い白衣に あゝ騙される
   あゝ騙される 女郎花     ♪


さて、これはいったい何の替え歌でしょう?
答えはまた明日。

「赤坂 藤」
東京都港区赤坂3-15-14
03-3585-7887