2021年11月4日木曜日

第2778話 板そばに 雪降りつもる 柳橋

ニタリクジラのステーキに満足したあと、

夕刻までの身の置きどころを思案する。

都内に数多あるナントカ銀座の中でも

ひときわユニークな存在、砂町銀座に行こうと思った。

 

メトロ東西線・南砂町から丸八通りを北上する。

やって来た砂銀に以前の活気は戻っていなかった。

シャッターが下りている店も目立つ。

 

大島―亀戸―錦糸町―両国

と歩き、隅田川を両国橋で渡る頃には

夜の帳(とばり)が下りていた。

 

今度は神田川を柳橋で渡った。

NYから帰国後の10年余りを暮らした柳橋には

少なからぬ愛着を抱いている。

うなぎ「よし田」、「梅寿司」、洋食「大吉」。

幾度もお世話になった店々が揃って健在。

いや、うれしいねェ。

 

入店したのはカフェみたいな内装の「百そば」。

数ヶ月前に開業した新店は初訪問。

実はアパレル関係に従事する友人のオススメだ。

仕事柄、月に何回も界隈に来るそうで

偶然見つけ、気に染まったとのこと。

 

緑のわさびの代わりに白い山わさびがそばに散る、

雪板そば(780円)を強く推奨された。

山わさびはローストビーフに

不可欠なホースラディッシュである。

サッポロ赤星とともにお願いした。

 

ほほう、美しい板そばが運ばれた。

30cm、縦15cmの箱板にすのこが敷かれ、

その上に輝くそばがつややか、

左半身に卸し立ての山わさびが

新雪の如く降り積もっている。

心なしか箸を持つ手が震えた。

 

いやはや、いいネ、美味いネ。

そば・つゆともに良く、

優良そば屋がなかった土地にこれは吉報。

 

北海道・十勝の山川農園が育てた山わさびは

効きすぎるほどに効くが

刺身・鮨に本わさびをこれでもかと、

大量に使うJ.C.にはピッタリだ。

 

熱いそば湯と冷たい韃靼(だったん)そば茶を

いただいて、ごちそうさま。

昼の鯨に引き続き、夜のそばにも

ニタリと笑みがこぼれた次第です。

 

「百そば」

 東京都台東区柳橋1-32-5

 03-5846-9138