2021年11月15日月曜日

第2885話 眼前に 岡山城が そびえ建つ (その1)

都心から小田急線で西に向かい、

下北沢の一つ手前、東北沢に来た。

目当ては駅前の「美苑鮨」。

以前、散歩していて見つけた。

 

岡山のばらずしを供する稀少な店につき、

今度ばかりは前日に電話を入れて

翌日の営業を確認した。

 

いつもの調子で空振ったら即アウト。

簡単に代替店が見つからない町だからネ。

予定より早めに着き、大山みはらし広場から

代々木上原方面の好景を眺めることしばし。

 

約束の12時半に入店すると親方一人きりの様子。

ビールは生がキリン・ハートランド。

瓶はサッポロ赤星中瓶。

生でお願いする。

 

昼のメニューは基本的に以下の通り。

 

岡山ばらずし 烏城黄金ばらずし 

瀬戸内にぎり 江戸前にぎり(美苑・上・特上)

 

前日の電話で

烏城黄金(2500円)をお願いしてある。

“うじょうこがね”と読む。

烏城は岡山城の別称、黒い城壁を持つ城を指す。

東日本の第一感は松本城だが

あちらは“からすじょう”と湯桶(ゆとう)読み。

 

最初に予期せぬ茶碗蒸しが供された。

珍しくも黄ニラが散っている。

具材はズワイガニ脚肉、たら白子、紅葉麩。

なかなかにぜい沢な一椀、もとい、一碗だった。

 

グラスを飲み干し、赤星に切り替えてほどなく、

ばらずしが整った。

オー・マイ・グッドネス!

目の前の光景はまるで岡山烏城の如し。

生醤油・山葵などのお供すら従えていない。

 

まずは天守閣からつまびらかにしていこう。

てっぺんには黒豆・しいたけ・煮ちりめん。

酢ばす、絹さや、竹の子、漬け生姜が周囲を囲む。

 

そして主役の海の幸は

さわらままかり、小鯛、剣先いか、たこ、

しゃこ、海老、蒸しあわび、煮藻貝

赤字はいかにも岡山チックな食材である。

 

その下の土台と石垣は

ごぼう&にんじんを炊き込んだ酢飯。

錦糸玉子&焼き海苔が彩りを添えていた。

グルメ番組のリポーターならバカの一つ覚え、

旨そう! 美味しそう! の連呼必至なりけり。

 

=つづく=