2021年11月30日火曜日

第2896話 あの牡蠣をふたたび

先月亡くなったフランスの俳優、

ジャン=ポール・ベルモンドの主演映画に

「あの愛をふたたび」(1969)がある。

 

クロード・ルルーシュと

フランシス・レイのコンビによる、

一連のシリーズにあって

小粒ながらもキラリと光る秀作だった。

 

ラストシーンはヒロイン、

アニー・ジラルドのクローズアップに

レイの音楽が重なり合い、深い余韻を残す。

 

今話は“愛”の代わりに“牡蠣”。

先日訪れた練馬の「よつぼし」で出逢った、

三重県・的矢湾の生がきが忘れられなくて

「あの牡蠣をふたたび」を目指したのだ。

 

相方は昨夏、湘南・辻堂で酌み交わした、

やり手セールスウーマンである。

白物家電の専門家だが

ここ2ヶ月は売れに売れ、殺人的な忙しさ。

猫の手も借りたいほどだと言う。

 

牡蠣好きの彼女のため、

オイスいオイスターで慰労する腹積もり。

ドライの中瓶を注ぎ合って乾杯。

 

生がきリストをチェックすると、

ガガガガ~ン、ガガガガ~ン!

ベートーヴェンの「運命」が鳴り響いてきた。

よりによって、あの牡蠣がいないんだ。

あったのは同じ三重県でも

的矢じゃなくて浦村だとサ。

 

接客係のアンちゃんに三重の何処だべサ?

訊ねたところ、鳥羽のほうだと言う。

的矢よりちょいと北だな、近いからいいだろう。

いや、あんまり好くなかった。

 

食べ比べた4種のカキを好かった順に並べる。

 福岡・糸島みるく  2ー三重・浦村 

  厚岸・まるえもん  4―釧路・昆布森

的矢に匹敵するのはいなかった。

殊に昆布森は濃厚過ぎて苦手なタイプ。

岩ガキかと思ったほどだ。

 

ずっとビールで通した。

焼き鳥はツナギ・ハツ・モモ。

焼きとんはカシラ・シロ・タンモト。

タンモトがとりわけ美味だった。

 

散歩日和につき、西武池袋線沿いを

東長崎まで3駅ぶん歩いた。

残り2駅は電車に乗って池袋着。

いつもの「ふくろ 美久仁小路店」に直行する。

 

此処でもビール一本やり。

カレービーンズ(天豆)、めごちフライを通す。

ホロ酔いのセールスウーマンがすこぶるご機嫌。

サムいジョークですら受けて、笑うこと、笑うこと。

正真正銘、笑ゥせぇるすうーまんでした。

 

「練馬 よつぼし」

 東京都練馬区豊玉北5-15-5

 03-5946-9244

 

「ふくろ 美久仁小路店」

 東京都豊島区東池袋1-23-12

 03-3985-5832