2012年10月3日水曜日

第417話 指で包んだワイングラス (その2)

宇都宮のスペインバルにいる。
店の名前は「PEQUE(ペケ)」。
ワインもタパスもペケでないことを祈るばかりだ。
数席あるカウンターに止まっているのはJ.C.独り。
テーブルの半分は埋まっており、
入口近くに立ち飲みスペースが設けられているが
実質的にそこは喫煙コーナーだ。
同じ通りの「出世街道」で生ビールは飲んだから
グラスの赤ワインで始めよう。

 スペイン・・・メメント・ネグロ ¥600
 フランス・・・サンコム  コート・デュ・ローヌ ¥600
 イタリア・・・キャンティ・クラシコ(ベポリ) ¥700

10種類ほどの取り揃えから選ぶとなると
上記の3種に絞られる。
せっかくのスペインバルにつき、郷に従うことにした。
そうしておいてタパスメニューの吟味である。
何品か紹介してみようか。

 ポテト・ブラバスソース  自家製ピクルス&オリーブ
 青唐辛子のマリネ   以上 ¥300

 スペイン産ハモン・セラーノ  フラメンコ・エッグ
 タコのガルシア風  帆立の白ワイン仕立て
 広島産牡蠣のアヒージョ  砂肝とクワイのアヒージョ
 地鶏のアーモンド煮込み   以上 ¥500

にんにくオイル煮のアヒージョが好物ながら
初心貫徹でソパ・デ・マリスコス(魚介のスープ)を。
これも500円也。

最初の1杯のメメント・ネグロは
抜栓されたニューボトルから注がれたがイヤな予感。
ボトルに水滴が浮かんでいるのだ。
これは冷蔵庫から出された証拠。
案の定、キンキンとはいわないまでも冷え切っている。
赤を冷やしてしまう拙店は東京にも多々あるから仕方がないが
せめて数本、常温でキープできないものかねェ。

ことここに至り、ワイングラスを指で包む破目に陥った。
ブランデーグラスじゃあるまいものを。

 ♪ これでおよしよ そんなに強くないのに
    酔えば酔うほど さみしくなってしまう
    涙ぐんで そっと時計をかくした
     女ごころ 痛いほどわかる
    指で包んだ まるいグラスの底にも
    残り少ない 夢がゆれている    ♪
             (作詞:山口洋子)

裕次郎の「ブランデーグラス」を黙唱しながら
両手の指でひたすらワイングラスを温める。
それを見ていたスタッフが申し訳なさそうに
「新しいグラスに換えましょうか? 多少は変わると思います」
「いや、だいぶぬるんできたから結構、
 それよりキャンティを今のうちに1杯注いどいて・・・」
「エッ? ああ、ハイ!」
こんな会話が交わされた。

かなり時間が経ってソパ・デ・マリスコスが運ばれた。
真鯛の頭がド~ンと入ってるいるが
熱いスープとともに冷たさの残る赤ワインを飲むもどかしさよ。
宇都宮でウツになっちゃうかも・・・なあ~んてネ。

「PEQUE」
 栃木県宇都宮市江野町10-2
 028-634-9595