2012年10月9日火曜日

第421話 つい立ち寄った下北沢

再び小田急線に乗って若者の街、下北沢にやって来た。
原則として若者の街はキライである。
原宿・渋谷・自由が丘・吉祥寺、みんな好きじゃない。
年配者の心安らぐ場所がないもんネ。
オヤジが身を置く位置がないのだ。
何よりも街の散策を生きがいとする人間にとって
歩きにくいのは致命傷、歩道せますぎ、人多すぎなのである。

でも、そんな下北にオヤジがシックリくるところがあった。
下北一番街なるストリートは古き良き時代を偲ばせる。
地元の住民はこの界隈を下北の北沢地区というのだそうだ。
ふ~ん、なるほど。
数少ない下北の気に入り店2軒を目指す。
おい、町田で2軒寄っといて下北でも2軒かよ! ってか?
いいの、いいの、遠出したとこでは
最低2軒は行っとかなきゃハカがゆかないのっ。

1軒目は下北一番街の「やきとん 椿」。
失礼ながら焼きとん屋にはもったいない優雅な店名だ。
椿と聞くと第一感はクロサワ&ミフネの「椿三十郎」。
続いて都はるみの「アンコ椿は恋の花」。
あとは若かりしわが中学時代。
どこでどう間違ったかJ.C.は生徒会長でありんした。
そのときの副会長が椿クンという大変な秀才。
今でもちょくちょく酒を酌み交わしたり、
卓を囲んだりしているが
この椿、頭はいいのに麻雀はからっきしダメ。
つくづく天は二物を与えませんな。
おっと、ンなことはどうでもいい、先を急ぐ。

いつもは立て混んでる「椿」なのに当夜はヤケにヒマ。
ハツ・ナンコツを塩、シロをタレで焼いてもらい、
キリンラガーを飲む。
焼きとんと煮込みを食うなら隅田川の両サイドに限るが
山の手、しかも”食の不毛地帯” 下北にあって
「椿」の水準はかなり高い。
椿よツバキ、世田谷区にはまれなる佳店であるぞヨ。
昔、大橋巨泉のオジさんがひねった駄句を思い出した。
 寒ツバキ 吐くのはよそう 痰ツバキ

でもって2軒目の中華「来々軒」は「椿」の並びにあって
見てくれも内装もトロットロのレトロ。
昭和レトロを超えて大正ロマンと断じてもおかしくない。
そこに惚れこみ、以前「日刊ゲンダイ」に連載していた、
「J.C.オカザワのれすとらん知ったかぶり」で紹介したくらい。
料理に特筆すべき点はないのだが
ラーメンだけは懐かしの美味であることは確かだ。

ここでは一番搾りを飲みながら焼売をつまんだ。
ところがこの焼売、原因不明の酸味を発っしているのだ。
ハナから餡に食酢でも入れたのだろうが
こいつはいただけやせんぜ。
思えば店主もいい歳だからなァ。
カズ、イチロー、スポーツ選手に衰えが来るごとく、
料理人にもソレは必ずやって来る。


「やきとん 椿」
 東京都世田谷区北沢3-26-4
 03-3469-6879

「来々軒」
 東京都世田谷区北沢3-26-3
 03-3468-0247