2012年10月15日月曜日

第425話 夜霧のチャイナタウン 古く良かりしニューヨーク Vol.4

 ♪ メリケン情緒は涙の Color  Oh Oh 
    翔びかう妙な叫びが Yokohama に 
         エノケン・ロッパの芝居途中どうして
    彼女の姿が消える?
    夜霧の China Town を中ほど行くあたり 
    吐きだめたなびく魔のとびら Oh Oh Oh ♪   
                (作詞:桑田佳祐)

意表をついてサザンオールスターズで幕開け。
彼ら7枚目のアルバム、「人気者で行こう」から
「メリケン情緒は涙のカラー」である。
この曲、大好きなんですワ。
バンドホテルや産業道路なんかも登場してくるし・・・。

さて今を去ること十数年前、「読売アメリカ金曜版」に
「れすとらんしったかぶり」なるコラムを連載していた。
そこからセレクトする”古く良かりしニューヨーク”シリーズ。
今日は第4回をお送りしましょう。
題して「夜霧のチャイナタウン」。
そう、冒頭の「メリケン情緒~」は
歌詞にある”夜霧のChina Yown”に注目したワケであります。

=夜霧のチャイナタウン=

中華料理店ひしめき合うマンハッタンのチャイナタウン。
ひしめきピンキリのなか、良店の見極めが難しい。
今回はチャイナタウンの旨い店のご紹介。

まずは「Bo Ky (波記潮州小食)」。
潮州料理は四川や広東よりマイナーだが美味でつとに有名だ。
この店では平打ち・細打ちを選べるコシの強い玉子麺が上々。
小海老・魚団子・焼き豚入りに
熱々のスープを張ったカンボジア麺がとりわけ旨い。
どの料理も3~4ドルといったところ。

「Wonton Garden」は早朝の朝粥から深夜の湯麺まで楽しめる。
広東炒麺、香港伊府麺、海南鶏飯に加え、
上海小籠湯包までカバーするヴァリエーションの妙。
自慢のワンタンは小海老と豚挽き肉の餡。
スープにはねぎと黄にらが浮かんでいる。
ほとんどの皿が5ドルでオツリが来るだろう。

街はずれのチェイサム・スクエアに面した
「Hop Shing」は焼きそばを推奨する。
ローメンとパンフライドの2種類あるなか、前者が断然いい。
かん水香る麺は幼い頃食べた支那そばを偲ばせる。
ニンニクと一緒に揚げた殻つき海老にはビール、
生姜風味の渡り蟹には白飯がピッタリ。

どんじりに控えしは「Canton」だ。
ニューヨーク随一の中国料理店の折り紙をつけたい。
日本人におなじみの乾焼大蝦や青椒牛肉糸など、
丁寧な下ごしらえが繊細な仕上がりをもたらしている。
揚州名物の炒飯は昔懐かしい本物の味がした。
夜霧に濡れた横浜の裏街で
トレンチコートの裕次郎に食べさせたい、そんな味だった。

てなことで今日のお別れはやはり裕次郎でまいりましょうか。
大方の読者は「夜霧よ今夜もありがとう」を予想するでしょうが
ここでも意表をついて「夜霧のブルース」。
 
 ♪ 青い夜霧に 灯影が赤い
    どうせおいらは 独り者
    夢の四馬路か 虹口の街か
    あゝ波の音にも 血が騒ぐ  ♪
         (作詞:島田磬也)

おっと、オリジナルは裕次郎ではなく、ディック・ミネでした。
そう、そう、鶴田浩二も歌ってたっけ・・・。

「Bo Ky」
 80 Bayard St
 212-406-2292

「Wonton Garden」
 56 Mott St
 212-966-4886

「Hop Shing」
 9 Chatham Square
 212-267-0220

「Canton」
 45 Division St
 212-226-4441