2012年10月29日月曜日

第435話 昼下がりの江戸前鮨 (その1)

所用で日本橋と銀座のあいだの京橋へ。
ついでだからフィルムセンターに立ち寄り、
上映作品のスケジュール表をピックアップする。
その日は日曜日、時刻は13時半。
バタついていて昼めしを食べ損ねていた。

ひらめいたのは「レバンテ」のカキフライ。
JRのガードをくぐったところで
国際フォーラムから出てきたN藤サンとバッタリ出くわした。
旧知の友人は島根県・松江の人である。
先方もこれから昼餉の予定と聞き、
それではカキフライでもと誘うと
折悪しく昨夜の会合で牡蠣をたらふく胃袋に収めた由。
そりゃ塩梅悪いわな。

何がお望みかと訊ねたら、
真っ当な江戸前鮨が食いたいとのこと。
(ゲッ、鮨かァ、こりゃ予期せぬ出費になるなァ、
 せめて「竹葉亭」の鯛茶かまぐ茶なら・・・))
口には出さぬが胸の奥でつぶやいた。

どうやら心もとなさが顔に出てしまったのかもしれない。
N藤サン曰く、
「J.C.、ボクが言い出したんだからオゴるヨ」
「いえ、いえ落ちぶれ果ててもJ.C.は武士です、
 割り勘でいきましょう」
「いいからいいから、その代わり旨い鮨屋に連れてってヨ」
言い出したら聞かない人につき、
ええい、ままよと、店の選定に入った。

日曜のこの時間、開いてるところは少なかろう。
デッカい商業ビルに入居してる鮨屋なんざ死んでもイヤだ。
こういうときには浅草に限る。
加えて銀座より安いしネ。
でもって京橋に戻り、地下鉄・銀座線に乗り込んだ。

第一感の「弁天山美家古」は14時から17時まで中休み。
それではと「紀文寿司」の営業時間を調べたら
運よく日曜・祝日は休憩ナシの通しとあった。
その代わり早仕舞いするのだ。
N藤サンのおおよその好みは知ってるつもり。
ちまちましたにぎりよりガツンと来るのが好きなハズ。
要するに銀座タイプより浅草タイプが嗜好に合致しよう。

久々に「紀文」のつけ台に着く。
浅草でもっとも古びたたたずまいが
相方の好奇心を激しく刺激しているのが手に取るように判る。
品書きを見ると、以前はキリンラガーしか置かなかったのに
エビスが品書きに載っている。
「親父サン、何でまたエビスを?」
「いえネ、お客が置いてくれって言うもんだから・・・」
ふ~ん、そうかァ、自分も常連だったら
好きな銘柄を入れてもらうのになァ。
「浅草なのになんでアサヒを置かないの?」
店主の回答は実に意外なものだった。

=つづく=