2013年5月2日木曜日

第568話 想い出のスクリーン(その3)

昨日はブログのアップが大幅に遅れてしまい、ごめんなさい。
時間の入力ミスに気づいたのは午後になってからでした。
実はひかりTVで大好きな俳優、
鶴田浩二のNHKドラマ「男たちの旅路」に没頭しておりました。
朝の11時から夜の11時まで全9話を観了。
いや、長い一日でありました。
このドラマについては近々、稿をあらためましょう。

さて、

 ♪ オロロン オロロン オロロンバイ
   ネンネン ネンネン ネンネンバイ
   おどま おっかさんが あの山おらす 
   おらすと思えば 行こごたる 
   おらすと思えば 行こごたる   ♪
        (作詞:万城たかし)

高倉健が歌った「望郷子守唄」は
「ごろつき無宿」(東映=1971年)の主題歌。
「想い出のスクリーン」シリーズの締めは
健サンが三枚目を演じたこの映画だ。
晩年の国民的俳優も若い時分にはコミカルな役柄をこなしており、
テキ屋稼業におけるバナナのたたき売りなど、
なかなかのセリフ回しを披露して笑わせる。
それにしても「ごろつき無宿」とは
何とまあ、品性のないタイトルをつけたもんですなァ。

監督はのちに健サンと鉄壁のコンビを組んで
「冬の華」、「駅STATION」、「夜叉」、「鉄道員」と
数々の名作を生み出していった降旗康男。
もっともあの「昭和残侠伝」では
助監督をつとめているから二人は旧知の仲だ。

筑豊で炭坑事故に遭い、父親を亡くした主人公が
親の遺言を守り、炭坑夫に見切りをつけて東京に出てゆく物語。
ふるさとを離れて列車に乗り込む室木駅のシーンが
寅さん映画を想起させてわびしくも叙情にあふれている。
室木駅は1985年に廃駅になって七十有余年の歴史にピリオドを打った。

途中で何度か乗り換えたのだろうが
列車が有楽町を通過するシーンはこたえられない。
線路の右手に、サントリー<純生>と Fanta の看板。
左手には「肉の万世」の牛の笑顔と小島功が描いた清酒・黄桜のメスがっぱ。
この時代、日比谷・有楽町・銀座を遊んだモノにはこたえられない。
なつかしさに胸の奥で何かがパチンと弾けてしまう。
ここで画面はいきなり新宿西口のバスターミナルにすっ飛び、
少々鼻白んだりもするのだが、とにかく何度でも観たい作品だ。

新作はほとんど観ないのに昔の作品ばかりをたび重ねて観ている。
故きを温ねて古きを知っている。
鶴田浩二の「傷だらけの人生」ではないが
”こんなことを申し上げる私もやっぱり古い人間でござんしょうかねえ”

=おしまい=