2013年5月17日金曜日

第579話 鎌倉でもまたフラれ (その2)

鎌倉は和田塚の老舗うなぎ店「つるや」にフラれ、
それならばと、鮨屋「和さび」に電話を入れる。
折りよくすんなり予約が取れた。

「和田塚からタクシーで行きますが
 ドライバーにはどのように説明したらよいでしょう?」
「タクシーでしたら『和さび』と言っていただければ判ります」
へえ~っ、そんなに有名な店なのか! 
女将の応対に少なからず驚いた。

でもって乗り込んだクルマの運ちゃん、
なかなか饒舌にして親切な方で街のガイドをしてくれる。
鎌倉最古の寺、杉本寺を過ぎてほどなく「和さび」はあった。
ふ~む、これは古民家ですな。
ただし、せっかくの佇まいを
玄関に乱雑に置かれたビニール傘の束が台無しにしている。
イケませぬな。
美女の鼻腔からのぞく一本の鼻毛みたいなもんですな。

サッポロ黒ラベルの小瓶をたちまち乾しながら
酒肴をお願いしたら、昼はその用意がないんですと―。
したがっていきなりのにぎり責めである。
それもおまかせ一本槍、好きじゃないなァ、こういうの。
でも郷に入れば郷に従うほかはない。
鎌倉に入れば鎌倉に従うのだ。
すべてを順に記してみよう。

 いさき、平すずき、黄はた、ひらめ、
 赤貝、とり貝、青柳、たいら貝、焼き竹の子、
 赤身づけ、たこ、小肌、あじ、ゆで車海老
 中とろ、墨いか、煮穴子、
 かんぴょう巻き、玉子

にぎり17カンに巻きもの半本、そして玉子だ。
かなりのカン数ながら、極小サイズにてパクパクいけちゃう。
ただし、酢めしは他店に類を見ないほど固めの炊き上がり。
苦手な方は困惑しよう。
われわれはへっちゃらだけどネ。

平目にはおろしが、海老にはおぼろが、
墨いかには酢橘(すだち)と海苔の帯が、
それぞれあしらわれていた。
かんぴょう巻きはわさび、玉子はすり身入りだ。

どうだった?と訊かれれば、
美味しかったヨ、と応えることになろう。
だがネ、正直言えば、満足度も中くらいナリといったところだろうか。

「つるや」のうなぎを食べて長谷の大仏まで歩くつもりが
ここからではあまりに遠い。
近くの杉本寺、そして八幡宮を訪れて鎌倉駅に向かった。
さて、夜は横浜である。

「和さび」
 神奈川県鎌倉市浄明寺2-2-1
 0467-25-2767