2013年5月10日金曜日

第574話 心打たれた「男たちの旅路」

去る5月1日のメーデー。
朝の11時から夜の11時までぶっ通しで観続けたNHKドラマ、
鶴田浩二主演の「男たちの旅路」について語りたい。
制作されたのは1976~79年。
第1部から第4部まで、それぞれ3話の計12本。
’82年にはスペシャルとしてさらに1話が放映された。

今回、観切ったのは第3部までの9話。
’76年当時、2話ほど観た記憶があるものの、
ほとんどが忘却の彼方、
したがってすべてが初めて観るも同然である。

特攻隊の生き残りのガードマン、
吉岡指令補(鶴田)を中心に物語は展開されてゆく。
部下の杉本陽平(水谷豊)と島津悦子(桃井かおり)が
重要な脇役を担い、ともに好演している。

わけあって独り身を貫く吉岡は五十路のやもめ暮らし。
東京に唯一残ったチンチン電車、
都営荒川線・巣鴨新田のアパートに棲んでいる。
東映の仁侠&戦争映画で復活を遂げた鶴田浩二には
これ以上ないハマリ役と言える。

NHKに大ヒットした「傷だらけの人生」を
好ましくない曲として批判された鶴田は以来、NHKと絶縁していた。
脚本の山田太一の骨折りもあって両者の関係は雪解けを迎え、
鶴田は「男たちの旅路」の出演を受諾したのであった。
’77年1月に放映された歌謡番組、
「ビッグショー」も和解があってこそ生まれた企画である。
鶴田の遺作となった、やはりNHKドラマ「シャツの店」では
因縁の「傷だらけの人生」が歌われるシーンもあったという。

強く印象に残る話はまず第3部・第1話の「シルバー・シート」。
とにかく勢揃いした老優陣がありえないほどにスゴい。
反乱を起こして荒川線の車両をジャックした四人の老人、
笠智衆・加藤嘉・殿山泰司・藤原釜足に加え、
志村喬と佐々木孝丸まで配されている。
こんな豪華キャストに恵まれたTVドラマはこれが最後であろうヨ。

そして同じく第3部・第3話の「別離」だ。
死の床に着いた悦子(桃井かおり)との涙の別れ。
これにはまいった。
観ているほうも涙をこらえるのに必死であった。
最愛の悦子を失った吉岡は職を辞し、
独り、今は無き特急ひばりで東京を離れる。
このラストシーンでは吉岡がどこに旅立つのか明らかにされていない。
ひばりの終点は仙台、彼の地であらたな人生に踏み出すのだろうか?

まだ観ていない第4部がDVD化されているのを知った。
数日後にはTSUTAYAから宅配されてくる手はず、
今から楽しみで仕方がない。
昭和を代表する大スター・鶴田浩二。

 ♪ 夢をなくした 奈落の底で
   何をあえぐか 影法師
   カルタと酒に ただれた胸に
   なんで住めよか 何で住めよか 
   あゝ あの人が        ♪
        (作詞:宮川哲夫)

彼の歌う「赤と黒のブルース」を聴きながら、この稿を書き終えた。