2013年5月13日月曜日

第575話 フラれフラれて大塚の町 (その1)

春の宵、マイ・フェイヴァリット・タウンの大塚へ。
みちのくののみとも・R子が到来したから同伴する。
実は先週紹介したTVドラマ「男たちの旅路」のせいで
都営荒川線・巣鴨新田に心誘われていた。
鶴田浩二扮する吉岡指令補がこの場所に暮らしていたのだ。
相方も東京のチンチン電車は初めての由、
満面の笑みを浮かべ、二つ返事でついて来た。

巣鴨新田は大塚から一つ目の停車場。
駅名は巣鴨でも大塚の一角といってよい。
大塚なら酒亭「江戸一」経由、
もつ焼き「富久晴」がお定まりのコースながら
当夜は八十路の老夫婦が切盛りする「千通食堂」が狙いの的だ。
停車場から徒歩3分ほどの距離にあり、
野菜炒めとポークソテーで一杯飲る腹積もりだった。

明るいうちに電話を入れ、夜の営業を確かめて赴いた。
到着したのは19時半。
店内に灯りは見えるものの、暖簾が仕舞われている。
ややっ、これはどうしたことだろう、
おそるおそる引き戸を引くとオヤジさんが独りでポツン。

「もう、お終いなんですか?」
「ええ、閉めちゃったんです」
「さっき電話したんですけど・・・」
「ごめんなさい、女房が急に体調崩しちゃって・・・ごめんなさい」

病気ならば仕方がない、ご高齢ですからネ。
それならばと向かったのが
明治通り沿いは大正大学前にある大衆酒場「高木」だ。
しかるにこちらもシャッターが下りていた。
見たところ、ここしばらくは営業した様子がない。
長期休業後の再開を聞き及んでの訪問だったが
フラれの上塗りであった、いや、まいったな。

でもそこは勝手知ったる町のこと、
巣鴨新田の隣り駅、庚申塚に「庚申酒場」なる、
これまた老齢の女将さんが営む酒場を思い浮かべた。

途中、通りすがったのは餃子専門店の「ファイト餃子」。
名代のホワイト餃子はフランスパンの生地で包んである。
噂には聞いたものの、未食だったし、
相方も興味を示すので即入店と相成った。

フラれ続けてずいぶん歩いたからノドはカラカラのカラ。
グイッと飲み干す生ビールの旨さは何物にも代えがたい。
30分少々の滞在で中ジョッキを3杯空けちまった。
くだんのパン生地餃子はそれなり。
むしろ卓上のメニューにあった<お新香>に惹かれた。
冬・春が白菜、夏・秋はぬか漬けとある。
こういう気の利いた棲み分けだけで
優良店と思えてしまうわが単純さが浅はかなりにかわゆい。

ところで五月は春かネ? それとも夏なのかネ?
お願いしたらお運びの婆ちゃんが山盛りの白菜を持って来た。
こんなに食えるかな?
大量の白菜漬けの表面をよお~く眺めると、
不気味にもキラキラ光っている。
あちゃ~! やっちまったヨ。
怖れていたことが現実となった。
そうなのサ、これがあるから新香はアブナいのサ。

=つづく=