2013年10月7日月曜日

第680話 一年ぶりに大宮へ (その6)

埼玉・大宮の夜も深まり、佳境に入った。
とっくに子どもは家へ、カラスはねぐらに帰って
いよいよ大人の時間である。
ここでJ.C.、なけなしの知恵を絞る。
どこへ行こうか?
よお~し、最後はバシッと決めたろうじゃないか!

二、三の候補が浮かんだものの、
締めはガラリ趣きを変え、アメリカン・キュイジーヌにしてみた。
店の名は、らしからぬ「HAMACHO」。
なんでこんな名前にしたのか訊きそびれたが
米国料理店で「ハマチョウ」とはこれいかに?

まっ、難しいことは考えずに入店。
2階の奥の居心地のよいテーブルに案内される。
飲みものはワインでいこうと、意見の一致をみた。
互いに酩酊しているため、
ここはふところにやさしい廉価なワインでじゅうぶんだ。
そこで選んだスペインの赤はフルボトルで2500円也。

CPの高さが自慢のスペインワインは
テンプラニーリョが主力セパージュ。
おそらくそれに間違いなかろうと
安易に考えたのがしくじりのもとで
登場したのは苦手なカベルネ・ソーヴィニョンだ。

案の定、舌になじまない。
タンニンが口中で暴れてしまう。
カベソー好きの相方はシレッとグラスを重ねている。
やれやれ、こういうこともたまにはあるぜヨ。

さて、フードである。
惹かれたのはNYチャンクでハーフ・ポーションが400円。
コンビーフとじゃが芋を炒め合わせた料理は
アメリカ的といやあアメリカ的だ。
チリビーンズのハーフポーションも400円。
これは確か、刑事コロンボの大好物じゃなかったかな?
まずはこの2品をワインの友とした。
めったにお目に掛からぬ料理はどちらもそこそこ美味しい。

2皿の小品ではワインを飲みきれない。
赤によく合う骨付き仔羊のソテー(1500円)を追加する。
記憶はおぼろげながら、フレンチやイタリアンのように
あまり香草を使ってなかったように思う。
羊肉の脂をカベソーの渋味がサラリと洗い流すのを実感できた。

羊を食べてるうちに酔いが回ってくる。
羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹・・・頭の中に羊雲が湧き出てきた。

 ♪ あゝ日本のどこかに
   私を待ってる人がいる
   いい日旅立ち 羊雲をさがしに
   父が教えてくれた 歌を道連れに ♪
          (作詞:谷村新司)

どこからか百恵チャンの歌声まで聴こえてくるのでした。

=おしまい=

「HAMACHO」
 埼玉県さいたま市大宮区大門町1-10-2
 048-641-0002