2013年10月29日火曜日

第696話 歳をとったら日本そば

以前の仕上がりとは似ても似つかぬほどに変わり果てた、
かつての名酒場「山利喜」の牛もつ煮込みに
傷心の決別をして店先の森下交差点。
清澄アヴェニューと新大橋ストリートの十文字だ。
ちょいとキザな表現ながら
ニューヨークのマンハッタンにおいては
南北に走る通りがアヴェニュー、東西がストリートだ。

通りの向こう側に手を振る和雄サンの姿が見えた。
隣りにさだおサンもご一緒だ。
三人揃って日本蕎麦舗「京金」の暖簾をくぐる。
予約したテーブルには先着の熟女二人が待ち受けていた。
五人合わせて320歳近くになろうか。

熟女と呼ぶにはまだ早い、
いわゆる半熟のパン子だけは仕事帰りでまだ未着。
とりあえずエビスの生で乾杯だ。
苦手な銘柄ながら1杯だけおつき合い。
そうこうするうちパンちゃん駆けつけ、あらためて乾杯となる。

一息ついてそば前の吟味に入った。
といってもこの店の品書きはバッチリ把握しているので
J.C.がパパッと仕切らせてもらった。
注文品はかくのごとし。

出汁巻き玉子 そばの実入り焼きみそ 
*白菜新香 蛍いか沖漬け わかさぎ天ぷら

ベストは*赤字の白菜である。
秋の深まりとともに風味を増して卓抜な漬け上がり。
芋焼酎・蔵の師魂のロックとシンクロナイズド・マッチングであった。
ほかの料理もおしなべてよく、一同エビス顔である。
べつにエビスビールのおかげじゃないけどネ。

締めのせいろはやや平べったい形状、
パスタのリングイネを想起させる。
老舗には珍しく、盛りがよろしい。
”藪”や”砂場”の諸店はこの精神を見習っていただきたい。

つゆもキリッとしていながら下町の俗っぽさを内包してなかなか。
本わさびはありがたいけれど、
おろしてから時間が経っており、キレ味に欠けた。
とはいえ、旨いそばに舌鼓の老頭児(ロートル)たちは大満足。
まっこと、歳をとったら日本そばである。

交差点を少しく南下して活魚と季節料理の「杉」に移動する。
うれしくもアサヒの大瓶に息を吹き返したJ.C.であった。
われながら単純だネ、ジッサイ。
刺身の盛合わせを大皿でお願いしたが
盛りのよいせいろを1枚やってきたもので
男性陣はほとんど箸がすすまない。
その点、女郎衆はスゴいや、パックパクだもんねェ。

2皿で登場した栃尾の油揚げはさすがにこたえたようで
1人前は誰かがお持ち帰りしたようだ。
ビールのあとは東海林御大の意向もあり、珍しくウイスキーの水割り。
銘柄は国産のスーパーニッカだ。
スーパードライに続いてスーパーニッカ。
こうして森下のスーパーナイトは更けていったのでした。

「京金」
 京都江東区森下2-18-2
 03-3632-8995

「杉」
 東京都江東区森下1-5-7
 03-3634-2578