2013年10月24日木曜日

第693話 天ぷら屋から洋食屋

下町は深川の北辺、森下の町にやって来た。
深川の南端、門前仲町から歩いて来たのだ。
行く先は下町情緒漂う天ぷら店「満る善」。
何たってこの屋号がいいやネ。

初めて訪れたのは2002年のこと。
もう11年の月日が流れたんだねェ。
そのときと変わらず、老夫婦二人だけの切盛りである。
当時すでに老夫婦だったから、かなりのお歳になるハズだ。

胡麻油香る天ぷらは江戸前の正統派。
したがって色どりのしし唐以外に野菜類は揚げない。
天種は海老・きす・めごち・いか・穴子が常備されており、
秋口からハゼが登場し、冬場には牡蠣が加わる。
J.C.が好むのはサカナたちすべてと牡蠣である。

当夜はわれわれのすぐあとに
近所のオジさん5人組が現れ、店主は大忙し。
注文品がなかなかでき上がってこない。
突き出しのゲソワサでビールを飲みながら待つ。
ゲソはゲソでも柔らかな墨いかのそれがうれしい。

やっと運ばれた、あじ酢と墨いか刺しはやや疑問。
本わさびを持込んでいたが、それでもイケなかった。
この10年の間に変わったものは
生モノのレベルダウンとぬか床のゆき過ぎた熟成化だ。
以前の浅漬けのほうがはるかによかった。
というより、苦手なタイプの酸味・風味が立ってしまっている。

海老・きす・めごち・穴子と揚げてもらい、ベストは穴子。
穴子の上半身だけは天つゆにくぐらせたが
ほかはみな大根おろしと生醤油でいただいた。
この食べ方が一番好きなのだ。
あとは注文する料理がないので2軒目に移動する。

森下の交差点を西に進み、洋食の「深川煉瓦亭」へ。
銀座3丁目の老舗中の老舗、本家「煉瓦亭」ののれん分けがここ。
もっとも都内のあちこちにのれん分けは散在している。
さっそく献立表を見ると、10年前に比べて
マカロニグラタン(950円)、ミックスフライ(1250円)、
ビーフシチュー(1700円)は100円の値上がり。
ラーメン(600円)、五目そば(930円)、
オムライス(900円)、カツ丼(930円)は50円値上げだ。

銘柄を失念したが赤のハウスワインをボトルで開けた。
2/3をJ.C.が、残りを相方が飲んだものの、いや、これが不味い。
「満る善」では軽くつまんだ程度だったので
ハンバーグステーキ(780円)に
ブラック・オムライス(価格不明)というのを所望してみる。

ハンバーグは以前と変わらぬ味。
初顔のブラック・オムライスには
黒胡椒タップリの照り焼きソースが掛け回されていた。
だけどサァ、照り焼き味のオムライスはないだろうヨ。
怒った相方はカレーライス(750円)で口直しときたもんだ。
何だか不完全燃焼に終わった森下の夜。
たった2軒でお開きといたしました。

「満る善」
 東京都江東区森下1-18-1
 03-3631-1931

「深川煉瓦亭」
 東京都江東区新大橋2-7-4
 03-3631-7900