2013年10月16日水曜日

第687話 東京の下町ってどこなのサ?

友人・知人からよく訊かれることに
「東京の下町ってどこからどこまでなの?」というのがある。
この応答がなかなか厄介だ。
下町をキッチリ区分するのはきわめて難しい。
江戸っ子、あるいは東京人の間でもイメージは人それぞれで
とてもとても一括りにできはしない。

J.C.にも自分なりの下町イメージがあり、
それをつまびらかにするため、
9年前に上梓した「J.C.オカザワの下町を食べる」、
そのまえがきをご披露したい。

「食べる」シリーズ第4弾は下町。
漠然と下町といってもどの地域を下町と限定するのか、
行政区分もなければ、ましてや法的根拠などあるハズもない。
こればかりは著者の独断的なフィーリングで
区切りをつけたエリアというほかはなく、
読者の中には異論を唱える方、違和感を抱かれる方もおられよう。
そのあたりは著者の不明をお笑いいただいた上で、
寛大なご理解を賜りたい。

対象は主として隅田川の両サイド、
川からそれほどの離れない地域とした。
都内23区のうち、隅田川右岸の中央区と台東区、
左岸の江東区と墨田区の計4区にまたがり、
中央区では、銀座・豊海町・晴海を除く全エリア、
台東区は、上野・下谷・台東・秋葉原を除くエリア、
江東区全体のおよそ4分の1、
墨田区全体の3分の1を占めるにいたっている。
主な地番を記しておくので参照していただきたい。

   □隅田川右岸            □隅田川左岸
    築地・新富・入船・湊        勝どき・月島・佃
    京橋・八丁堀・新川         門前仲町・深川・清澄
    八重洲・柳橋・浅草橋        白河・森下・菊川
    蔵前・駒形・寿・雷門        両国・本所・吾妻橋
    松が谷・千束・入谷         業平・押上・向島
    竜泉・三ノ輪・日本堤        東向島

右岸では日本橋人形町・日本橋箱崎町・東日本橋など
地番名に日本橋を含む全地域と、
元浅草・西浅草・東浅草など浅草を含む全地域をカバーしている。

東京の中心が東から西へシフトを始めて久しい。
時代の流れに取り残された感の否めない下町でもある。
確かにフレンチやイタリアン、あるいはエスニック料理に関しては
六本木・青山・代官山あたりに太刀打ちできやしない。
しかし、すし・天ぷら・うなぎ・そばなら、西に負けるものではないゾ。
どぜう・馬肉にいたっては東の独壇場だ。
まだまだ下町には大正・明治はもとより、
江戸の名残りをとどめる料理店が少なくない。
江戸庶民の味をぜひ味わっていただきたい。

わが心の下町を食べ歩いたこの半年は心底シアワセだった。
思いのいかばかりでも、
本書を通して読者に伝えられたなら、それにまさる歓びはない。
今はホッとひと息、おのれの舌と胃袋に
ねぎらいの言葉をかけてやったところです。

2004年4月 J.C.オカザワ

ということでございます。