2021年12月21日火曜日

第2911話 若旦那 お主は出来る! (その2)

荒川区・宮ノ前の「どん平」は20年ぶり。

中瓶を半分飲んだところでミニセット定食が整い、

カウンター越しに膳が手渡された。

内容は

半とんかつw/キャベツ とろろ小鉢 冷奴

たくあん なめこ・豆腐味噌汁 麦入りごはん

 

とんかつにデミグラスがたっぷりかかっているが

「お好みでとんかつソースをかけて下さい」の一言。

とろろは出汁醤油の薄味。

冷奴は炒り豆腐のように崩され、これも下味付き。

ごはんの麦はごくわずかだ。

 

とんかつは4切れ。

厚みがあるので箸で分断したら

ん? 何だ、なんだ、フニュッときた。

とてつもなく柔らかい。

ほとんど噛まなくてもいいくらい。

 

ハハ~ン、これは下茹で、いや、蒸しかな?

とにかく下ごしらえが施されている。

珍しいとんかつだ。

毎度、このタイプじゃ困るけど、

たまにはいいかもしれない。

それにしても20年前はこんなじゃなかった。

 

大・小のとんかつはあらかじめコロモをまとい、

注文が入るたび、鍋にポンポン投入されてゆく。

これが手際の良さの秘訣だった。

2階の料理はダムウェイターでリフトアップ。

上手いこと考えてるなァ。

 

隣りに座ったオジさんが、とんかつ定食を通すと

「麦入りにしますか? 白ごはんですか?」

とろろ付きの注文は無条件で麦入りだが

とんかつのみは、ごはんを択べるのだ。

オジさん、麦入りを選択。

 

13時半を回っても客足は落ちない。

「いらっしゃいませ~!片付けないと

  座れないんで外でお待ち下さ~い!」

女将ではなさそうだが八面六臂の活躍ぶり。

 

突然、彼女がキッチンに叫んだ。

「若旦那! お持ち帰りのカツサンド、

  何分くらいですか?」

「う~ん、20分かな」

 

そうか、そうなんだ、彼は先代の倅だったのか―。

道理で年季が入っているわけだヨ。

いずれにしても若旦那、お主は出来る!

 

「どん平(べい」

 東京都荒川区西尾久2-2-5

 03-3893-8982