2021年12月24日金曜日

第2914話 濁り酒濁れる飲みて

所用を済ませてJR山手線・巣鴨駅前。

16時半では店々が開くにちと早い。

「ほていちゃん」なら飲めるから

とりあえず赤星を1本いっとこう。

 

歩みを進めると、

同じ並びの手前に「千成」が営業中だ。

そうか、ここは16時スタートだったか―。

これ幸いとステップ・イン。

 

ドライの大瓶に添えられた突き出しは

小鉢いっぱいの煮ものである。

ずいぶんと盛りだくさんだ。

厚揚げ・竹輪・さつま揚げ・大根・にんじん・ごぼう。

里芋が主役の様子で小ぶりながら丸々2個入っている。

ほかに何も要らないくらいだが、そうもいかない。

 

品書きとにらめっこの末、

前々日、人形町の「笹新」で

食べたばかりの〆さばアゲインと来たもんだ。

 

おやっ? 姿カタチが

「笹新」のソレに瓜二つじゃないか―。

つま大根と大葉の上に5切れ。

皮目に格子の包丁が入り、身肉は斜めのそぎ切り。

似非わさびまで、すべておんなじ。

 

「笹新」と「千成」、ブツを取り換えて出しても

客は違いに気付くまい。

いや、双方の女将ですら違和感を抱くまい。

まるで同じ料理人が作ったかのようだ。

肝心の味わいもクリソツ、鮮度高く〆が浅い。

あえて甲乙つければ「千成」に軍配かな?

 

めったに飲まない、にごり酒を所望したが

いずこの産だか聞きそびれた。

〆さばとの相性は悪くない。

さて、次は隣り町、千石の角打ちに回ろう。

 

突然、島崎藤村の「小諸なる古城のほとり」、

そのラストが脳裏をよぎった。

濁り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む

 

当方の場合は

濁り酒濁れる飲みて 千石へしばし歩まん

 

「十一屋 能村商店」に来た。

ショーケースから

アサヒ生ビールのレギュラー缶を取り出す。

マミツは生ハムを切り出してもらう。

常連サンに混じって、しばし談笑。

 

2杯目はスモーキーなシングルモルト、

ラフロイグのロックを―。

今日はめったに口にしないものばかり飲んでいる。

 

これがまた生ハムに合わないことはなはだしい。

いや、マイッたな。

スコティッシュとイタリアン。

おそらく彼らの仲はよろしくないものと思われた。

 

「千成」

 東京都豊島区巣鴨2-3-8

 03-3918-9479

 

「十一屋 能村商店」

 東京都文京区千石3-38-11

 03-3941-1911