2021年12月22日水曜日

第2912話 月日流れりゃ 世代も替わる

この日の舞台は日本橋人形町。

江戸の昔、1657年の明暦の大火(振袖火事)で

消失するまでは当地に吉原遊郭があった。

浅草の奥に移り、新吉原と呼ばれたものの、

いつの間にやら“新”がとれて現在に至っている。

 

16時の開店と同時に甘酒横丁の「笹新」へ。

15年ぶりである。

店先に並んでいた先客5名のあとに続いた。

 

店主の姿が見えない。

倅かな? 板さんが若い。

嫁かな? 横に立つ女性も若い。

先代の女将かな? 厨房に初老の女性。

以上、スリーオペだ。

 

8席のくの字形カウンター、

その真ん中の鉤の手に促された。

此処に1席設けるかネ、居心地がよくないヨ。

 

黒ラベルの大瓶と〆さばを通した。

鮮度の高い5切れは〆が浅く、悪くはないが

居酒屋より格上の酒亭だけに似非わさびが残念。

30分でカウンターは満席となり、

2卓あるテーブルの1卓も埋まった。

 

大瓶のお替わりとなめたがれい煮付けを―。

煮置きの温め直しは煮付けというより煮締めだネ。

子持ちの腹子の半分が煮崩れ、消えちゃってるヨ。

滞空45分で会計は2900円也。

 

2軒目も同じ人形町の「天ぷら 中山」。

13年ぶりだが、やはり店主の姿がない。

見覚えのある倅と女将の母子ツーオペは

驚いたことに女将が天ぷらを揚げる。

亡くなったのかと思いきや、

店には立たないものの、仕込みは手伝うそうだ。

 

寒い夕べに大瓶を2本飲み、身体が冷えた。

二合徳利の賀茂鶴を熱めにつけてもらう。

天ぷらはお好みでお願いした。

 

最初のキスとメゴチはメゴチの入荷なく、

代わりに海老を―。

うむ、先代とはまったく違うな。

下町の江戸前天ぷらという味わいが消えた。

揚げ手の力量がモロに出るニンジンを頼む。

粉のトロみが残ってしまい、好くない。

 

これだけは丼つゆにくぐらせて欲しいと

リクエストした穴子も同様だ。

素材が良いだけに惜しい。

滞空30分で金2200円を支払い、町をあとにした。

 

2店とも代替わりして若返ったが心にすきま風が吹く。

月日が流れりゃ当たり前でもさびしさは募る。

ん? 10年以上も放っといて

すきま風もへったくれもあるもんか! ってか?

ハイ、仰せの通りにございます。

 

「笹新」

 東京都中央区日本橋人形町2-20-3

 03-3668-2456

 

「天ぷら 中山」

 東京都中央区人形町1-10-8

 03-3661-4538